【ニュースレター】革新的軽量化に貢献した「アルミブレンダー」
ヤマハ発動機が誇るアルミブレンダー
「ほんの少しの条件を変えただけで、性格がまったく変わってしまう。本当に繊細で、遊びの幅もない相手」。まるで友人や知人のことをおもしろおかしく紹介するかのように、大島かほりさん(当社材料技術部/写真)が話すその「相手」とは、金属素材の一つ、アルミニウムのこと。二輪車や船外機など、当社のさまざまな製品に用いられる材料です。
入社以来、研究部門でアルミ一筋に向き合ってきた大島さんは、開発や製造の現場からも頼りにされる材料研究者。上司はその存在を「ヤマハ発動機が誇るアルミブレンダー」と称し、賛辞を送ります。
アルミと一口に言っても、製品や使用部位、その加工方法によって求められる性格は異なります。「会社には先人たちが積み上げてきたアルミのレシピが豊富にあって、それが当社の強みになっています。『アルミは負けられない領域』という風土の背景には、鋳造を自前でやり続けてきた自負や誇りがあるんだろうと思います」(大島さん)。
赤々と燃え上がるアルミ溶湯の温度管理や、そこにブレンドする秘伝の"はなぐすり"、そして成形された製品に与える仕上げの熱処理。学術的知識や自由な着想など、硬軟織り交ぜながら目指す強度や靭性、美しさを追求するのが素材研究者としての大島さんの本分です。
製造の現場から革新を起こす
回転塑性(フローフォーミング)加工という手法を用いて製造される「MT-09」のアルミホイールは、大島さんの研究成果の中でも代表作と言える存在です。
「素地のアルミを強くすれば、製造の現場から革新を起こすことができる」――。そんな野心から始まった超軽量化へのチャレンジ。設計・製造部門と力を合わせてプロジェクトに没頭し、先人のレシピにもない専用のアルミ合金のブレンドと熱処理を生み出しました。回転塑性加工による二輪車用ホイールは量産車初。「SPINFORGED WHEEL」と名づけられたこのホイールは、厚さ2mmという超肉薄(前モデルは3.5mm)を実現し、前後合わせて約700gの軽量化に成功しました。まさに革新と呼ぶにふさわしい成果です。
「一番の苦労は指標がなかったこと。評価の指標がなければ、どこを攻めていくべきなのかもつかめません。材料開発と評価方法の構築を同時に進めていくところに難しさがありました」と大島さん。しかし大きな苦労を重ねたぶん、やり遂げた今は「誇らしい気持ち」だそうです。
「たとえば、強さだけなら鉄に敵わない。でもアルミには軽さや腐食のしにくさ、加工の自由度、そして美しさといった長所があります。この先ものづくりが変わっていっても、アルミはいつまでも選ばれていくはず。そしてその力を発揮させるのが研究の役割だと考えています」
■SPINFORGED WHEEL(映像)
■広報担当者より
「材料やその研究は、設計などと比べると花形ではないと思う。でも、縁の下のようなそんな立ち位置が好き」と大島さん。材料が変われば技術革新を起こすことができるという強い信念を胸に秘め、だからこそ「材料と向き合うのが楽しい。地味ですけど、なかなかいい仕事なんですよ」と笑顔で話します
本件に関するお問合わせ先
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
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