【ニュースレター】電動二輪でガソリンエンジン車とわたり合う運動性能
~全日本トライアル選手権の「TY-E 2.2」上位獲得を支えた若手制御エンジニアの情熱~
ジャパンモビリティショーで披露された「TY-E 2.2」のパフォーマンス。
黒山健一選手のライディングで、来場者から大きな喝采を浴びた
黒山健一選手のライディングで、来場者から大きな喝采を浴びた
内燃機関とわたり合い、年間ランク3位を獲得
111万2,000人の来場者を集めて11月5日に閉幕した「ジャパンモビリティショー2023」。そのヤマハブースでひときわ人気を集めたのが、電動トライアルバイク「TY-E 2.2」のパフォーマンスでした。電動ならではのクリーン&サイレントな特性に加え、楽しさと驚きにあふれたダイナミックな運動特性を披露して、インドアにおけるモビリティスポーツ&エンタテインメントの可能性をたくさんの来場者に実感していただきました。
モビリティショーが閉幕した翌週には、全日本トライアル選手権のシリーズ最終戦が行われ、「TY-E 2.2」は、開発ライダーでもある黒山健一選手のライディングで年間ランキング3位を決定。国内トライアル競技の最高峰に史上初の電動車として全戦に参戦し、ガソリンエンジン車とのガチンコ勝負で互角以上にわたり合いました。
この「TY-E 2.2」のチャレンジに一年間寄り添い続けた畔上和也さん(当社制御開発システム部)は、「本当にやりがいがあったし、楽しかった」と振り返ります。畔上さんは、貪欲な探求心と根気強いプログラミングで「TY-E」の電子制御に飛躍的な進化をもたらし、開発チームの仲間たちから"影の功労者"とも言われる若手人材です。
全日本トライアル選手権では、唯一の電動車としてガソリンエンジン車と熾烈な戦いを展開。年間ランキング3位を獲得した
目指すところは「手足の延長」の領域「正直なところ、黒山選手も不安だったと思います」と話す畔上さんには、トライアルの経験はありません。それどころか、オートバイの免許も持っておらず、秘めていたのはパワーエレクトロニクスの専門性と、無我夢中で物事に取り組む集中力と情熱のみ。
「テストで黒山選手からフィードバックを受けても、それがどのような操作で、どのような挙動なのかが一切理解できませんでした。ただ、その言葉を丹念に拾うことだけはずっと心掛けてきました」
畔上さんの検証方法は独特です。テストで集めた膨大なデータの波形をつぶさに検証し、「もしかしたら黒山さんの指摘はここのことかも」と仮説を立てる。そこにライダー側の実感は一切存在しません。
「仮説を立てたら、その対策をプログラムしてみる。その着眼点や仮説自体が的外れなこともあるのですが、それでも愚直に仮説と対策を繰り返しているうちに、黒山選手から『お、これ。これです』と言っていただけることもある。その積み重ねでした」
やがて、それまでの「TY-E」では出せなかったパワーや、操作性の明らかな改善を黒山選手が実感するようになると、畔上さんの書いたプログラムは敬意を込めて"畔マップ"と呼ばれるように。全日本での大健闘の原動力、その大きな一因となっていきました。
「目標は、黒山さんが手足の延長と感じられる領域まで達すること」。それはきっと、電動ならではの楽しさの提案にもつながることでしょう。
畔上さん(右から2番目)らの貢献により、「TY-E 2.2」はシーズン中にもぐんぐん戦闘力を高めていった
■広報担当者より
自然の地形や人工の障害物(セクションと呼ぶ)と対峙し、足をつかずに走破を競うトライアル競技は、まさに高次元の人機一体感が求められるモータースポーツです。アクセルワークだけでなく、全身を使ったライダーの入力に対して意のままにマシンを反応させるためには、制御の知識や技術のみならず、トライアル競技そのものへの深い理解が必要です。それを黒山選手の言葉と、残されたデータから紡ぎ出す作業はかなりの根気が必要だったはず。「初優勝を飾ったら、私もバイクの免許を取りに行くと決めています」と話す畔上さん。ますますの活躍を期待しています。
本件に関するお問合わせ先
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
本社:0538-32-1145 / 東京:03-5220-7211